Morita Lab blog

研究室のニュースやトピックスなどを紹介します

2020.4.5 イレギュラーな新年度

新年度が始まりました。今年の年度はじめは全てがイレギュラーです。それここれもSARS-CoV-2のおかげ。講義やガイダンス、出張のリスケジュールングなどいろんな面で影響が出てきています。

自分が学部学生の時、最初の研究テーマがマウスコロナウイルスの細胞内侵入機構に関するものでした。細胞への侵入に必要なウイルス側のリガンドはコロナウイルスの場合スパイクタンパク質が知られていますが、一部のウイルス株にはそれ以外にHE(ヘマグルチニンーエステラーゼ)タンパク質を持ったものが存在します。これはC型インフルエンザウイルスのHE蛋白質由来だと考えられているのですが、なぜ一部のコロナウイルスだけがHEを獲得したのか。HEを持つものと持たないもののあいだにはそもそも増殖能力に違いはあるのか?などなど、そんなことを一生懸命調べていました。朝から晩まで必死になってコロナウイルスの事ばかり考えていたのを懐かしく思います。今から二十数年前です。SARSが流行る前。国内ではほとんど誰も研究してない(正確にいうと精神神経センターの田口先生のグループが我々以外の唯一の研究グループでした)ある意味マイナーなウイルスでした。それが今や、世の中全てコロナウイルスに関することばかりではありませんか。まさかこんな世の中になるとはあの頃誰が想像していたでしょうか、、。すごく不思議な感じがします。

今回明らかになったことは、単なる風邪のウイルスとして放置されてきたものでも、ひとたび変異が入れば毒性の高いウイルスに変化し得るということです。そしてそれが社会に計り知れない大きなダメージを与え得るということです。我々も地道な研究でもいつか社会に役立つと信じて邁進するのみです。