コロナ禍に端を発した自粛要請のせいで外出する機会が消え、新学期が始まったにもかかわらず大学構内は閑散としています。自分はというと、いつにも増して忙しい時間を過ごしています。様々な報告書や総説の〆切、そして複数の研究費申請書の準備に論文投稿と、このなぜかこの4月5月に集中していました。連休も含めほぼ毎日ラボに来て仕事しています。
研究を行うには、言わずもがなそれ相応の資金が必要です。大学が準備してくれる資金は雀の涙であり、外部資金がないと実験ができません。外部資金を調達するには、1)これまでの実績、と2) investorを納得させるための十分な説明、の二つが重要な鍵となります。1)に関しては日頃の地道な取り組みが必要で付け焼き刃でしのげるようなものではありませんが、2)に関しては、ある程度技術と経験でカバーできます。十分な知識を持ち合わせていることと、社会的価値観の相場を読み間違えていないこと云々、挙げ始めたらキリがありませんが。こうして時間と労力をかけて練りに練った申請書を〆切間際に機関に提出するわけですが、多くの場合、課題が採択された場合にしかメールの返事は戻って来ません。不採択だった場合は数ヶ月遅れてピラピラの一枚の紙に「不採択」の一言だけ書かれた封書が届くのみ。ということで、申請書を提出したら後は「採択」の連絡メールがくるのをドキドキしながら待つ日々が続くわけです。
我々研究者にとって一番重要なのは、研究成果を発表すること。ある程度まとまったデータが得られたらそれを論文というカタチにまとめて雑誌に投稿して公表してもらうわけです。ここで重要なのは、どの雑誌に掲載してもらうか。購読者の多い科学雑誌は人気が高く紙面も限られているので、クオリティーの高い内容の論文しか載せてくれません。当然、我々もそういう科学雑誌に載せてもらえるよう、一生懸命実験データを集めて時間をかけて練りに練った文章を作成し挑むわけです。ではクオリティーの高さは、どうやって判断されるのでしょうか。まず、投稿された論文は編集者の選別を受けます。編集者は日々何十と投稿されてくる論文を読んで、インパクトのある発見のみをピックアップします。雑誌にもよりますが、この段階で7割8割が脱落すると言われています。仮に、もしこの段階で落とされた場合、投稿から1週間を待たずに返事が戻って来ます。ですので我々は投稿したらとりあえず、すぐには返事が来ないでくれと願うわけです。因みに編集者の選別を通った論文は、peer-reviewと呼ばれるプロセスに入ります。同じ分野で研究を行っている3名の研究者に論文が送られ、内容についての査読が行われます。一回の査読はだいたい1ヶ月くらいかけて行われます。そして査読のコメントに従って論文を修正し、再投稿し、またそれが査読され、の繰り返し。最終的に編集者がいいよというまでそれが続きます。果てしなく長い道のりbumpy road.
この2ヶ月のあいだ、来て欲しい返事と来て欲しくない返事をチェックする日々を過ごしていました。そんなのが続いて、少し疲労が溜まっています。