Morita Lab blog

研究室のニュースやトピックスなどを紹介します

2019.5.24 海の向こうはカリフォルニア

高知の桂浜で開催された日本脳炎ウイルス生態学研究会に参加してきました。フラビウイルスだけでなくベクターである昆虫の生態まで広く演題が集まる研究会です。普段、細胞の中のミクロの世界ばかりに焦点を当てていると、グローバルな疫学の視点が疎かになることが多く、その分野の情報を補う機会として毎年参加させていただいております。まあ、あと同じフィールドの研究者の方とのネットワークを作るという重要なミッションもあるんですが。

今回の研究会に参加して改めて感じたことに関して書きます。これまで自分はずっと日本脳炎ウイルスは有効なワクチンがあり、制圧下にある病原体であると思っていました。国内においてはそれはそれである意味正しいんです。事実、2018年の国内感染者報告数はゼロだったということで、かつては何万何千と発生していた症例をゼロにすることができたのですから、古くから対応されていた方々にしてみたらこのゼロという数字には感慨深ものがあるのではないでしょうか。ただ、まあ、ここのところ10人/年以下という数字が続いていたのでいつかはそういう日が来ることは予想はされていたでしょうが。いずれにせよ、このウイルス研究は感染症対策としてではなく、まだ対応できていない他のフラビウイルス(デングウイルスやジカウイウルス)の単なるひとつのモデルだろうとずっとそう思って研究してきました。しかし、海外をみるとそうでもないようです。うっすらとは知識としてありましたが、改めて今回の研究会で詳しく知ることができました。今回の研究会では中国CDCや感染研の方々が世界における日本脳炎ウイルスの疫学について詳しく紹介されていました。この感染症をうまくコントロールできているのは日本だけだで、世界中にはまだ数万人の患者が毎年発生しています。日本脳炎ウイルスによる感染症は数十パーセントのケースで重症化して後遺症になる神経変性を引き起こしたり、場合によっては死に至る怖い病気なんです。もちろん予防ワクチンを徹底的に普及させるということが目標であることは変わらないとは思いますが、万が一感染してしまった場合に対応方法がないというのも大きな問題で、それに備える研究をするというのも意義があるのではと、改めて思いました。もちろん、そこからデングやジカに対する方策も生み出されるというオプションもあってこそだとは思いますが。

高知へは人生で2回目の訪問。都市部からは空路でのアクセスがメインのいわゆる陸の孤島。我が弘前もしかりですが、孤島であればあるほど独特の文化が栄えるものです。空き時間にいろいろと散策しました。ひろめ市場で鰹のたたきを。比較的早い時間にいったにもかかわらず、、みんな呑んでます。さすが高知。鰹のたたきニンニクスライスが薬味で付いてくるのですが、翌日に研究会を控えているので、ほんの少しだけ(涙)。それでも美味しかったですよ。ほんとに。

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会場は桂浜すぐそばにあるホテルにて。「海の向こうはカリフォルニア」というお土産物屋さんの看板に書かれた言葉が妙に頭のこびりついて消えません。

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