Morita Lab blog

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ワクチン開発の重要性

数ヶ月前、取材を受けた記事が朝日新聞(全国版)に掲載されました。といっても、ちょっとした解説のみですが。

 ウイルス粒子がどうやってアセンブリするのか?というのが我々の昔からの大きな研究テーマです。一見、地味な基礎研究に思われがちですが、実はこれはワクチン開発に直結するとても重要な研究なんです。ワクチンの副作用を減らすには、抗原の余計な部分を極力削って、エピトープ(抗原決定基)のみに絞っていけば良いわけですが、逆に短いペプチドになればなるほど、免疫を惹起する能力が失われていってしまうという問題が生じます。そこで注目されているのが抗原の微粒子化。エピトープとなる数十アミノ酸の短いペプチドでも、ウイルス粒子の形を真似た微粒子に融合させることで、安定性が増し免疫系に捕捉されやすくなり、非常に強い抗原性を発揮するようになることがわかってきました。フェリチンという蛋白質微粒子に新型コロナウイルス抗原を付加したワクチンの米国での治験の成績がとても良いそうです。あまりにも抗原性が高いので、様々な変異株に効くユニバーサルワクチンとして機能するそうです。mRNAやDNAなどの核酸ではなく、従来の安全な蛋白質ベースのワクチンで、ユニバーサルに作用するって理想的ではありませんか。

 効果がないワクチンを、打つ必要がない人たちに強要する流れは、ワクチンに対する信頼性が損なわれてしまう原因になるのではと懸念します。現在、様々なワクチンが次々と開発・承認され、選択肢が増えてきています。その辺のことが皆さんにもっと伝われば良いと思うのですが。これまでの人類は様々なウイルス感染症を克服してきましたが、最も効果的だった方法はワクチンです。次のパンデミックに備えるためにも、ワクチン開発の重要性だけはどうか忘れないで頂きたいと心から思います。