Morita Lab blog

研究室のニュースやトピックスなどを紹介します

2019. 1. 28 がんは治る、、

宮城県がんセンターの田中伸幸先生に弘前大学にて講義をしていただきました。田中先生は私が大学院博士課程のときの助手(今の助教)の先生で、今も昔も免疫学の専門家です。共同研究の打ち合わせのために弘前に来られるとのことで、私が担当している学部2年生を対象とした細胞分子生物学の講義の最終回:がん免疫の回を担当して頂きました。まさにタイムリーでふさわしい方に講義をしてもらえたと思っています。なかなか専門家に講義をして頂ける機会はありません。その価値が二年生に伝わったか、、。おそらく伝わったとは思うのですが、、。それにしてもがん免疫、面白いですね。本庶先生のノーベル賞のこともありますが、これまで不治の病だと思われていた病気が治るようになったというのは、単純に考えて凄いことですよ。今まで手の施しようがない末期のがん患者も今では全快する可能性があるという、、。もちろん全てのがんが治るというわけではありませんが、いつかそうなってもおかしくないと思えるような状況であることは間違えありません。すごいことです。

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 私が研究の世界に足を踏み入れて20年近く経ちますが、自分の研究分野で不治の病がそうでなくなった例がふたつあります。エイズC型肝炎です。エイズに関してはHIVが感染すると致死率100%、C型肝炎に関しても多くの方が肝がんで亡くなられるような病でした。それがどちらのウイルスも今や感染をコントロールできるようになり、死と直結するような病ではなくなりました。なぜそうなったのか。まさにサイエンスの力です。基礎生命科学の研究者が地道な努力でウイルス増殖の分子機構を明らかにし、ウイルス増殖に必要な酵素活性もしくはタンパク質相互作用を阻害する低分子化合物を見つけ出すことができたからです。素晴らしいと思いませんか。抗生物質の発見のときのような偶然の産物ではありません。研究者が病を治そうと狙って獲得した知恵なのです。これと同じようなことが、今ガン治療の世界でなされています。そんな話を今回の講義で聞かせて頂きました。といっても、発がんのメカニズムという基本的なところから講義をして頂いたので、肝心の最前線のところは少ししか時間を割いてもらえませんでしたが。でも、何れにせよ、大変興味深い話を聞かせて頂きました。田中先生ありがとうございました。

 これからも外部の講師を積極的に呼ぼうと思っています。ということで、このブログを使って少し宣伝を。2/28に岩手大学の芝先生にセミナーをしていただくことになっています。芝先生は細胞内膜輸送の研究をしている方で、合成させたタンパク質がどのように分泌されるのか研究されています。最近の研究成果について話をしていただけるとこのことです。そして、3/4にはハーバード大学から寒原先生をセミナーにお呼びしています。正確にいうと、米国から一時帰国するそうなのでその機会に合わせて遠い弘前まで足を運んで頂くことになりました。寒原先生には今話題のパイロトーシスの分子機構の話をして頂くことになっています。マクロファージが炎症誘導物質を細胞外に放出する際、細胞膜に孔を開けて直接中身を漏出させるということが最近わかってきました。とても熱い分野です。どうか皆さん、ご参加お待ちしております。